追っかけPSR分析でグロース株の株価上昇メドを考えてみる

10月に、私はツイッター上で小さな発表をしました。よく調べてみると、PSRの出し方は3種類あって、そこで算出した計算結果の差から、将来的な株価のめどが立つのではないか、というものです。

この当時立てた仮説をもとにさらに研究を進めた結果、PSRを使った株価のめどを出せるようになったので、その研究内容を公表します。

おさえておくべき前提:発行済み株式数の定義

PSRの計算式は、「時価総額÷売上高」ですが、時価総額とは何かというと、「株価×発行済み株式数」になります。発行済み株式数は、定義の仕方が上場会社ごとに異なり、たとえば市場に流通しない議決権がたくさんある支配的株式(いわゆるクラスB株式など)をカウントしないケースなどがあります。

PSR分析をしている多くの人たちが、発行済み株式数の条件を明らかにしていないため、計算値にばらつきが出る現象が見られます。ポータルサイトそれぞれで発行済み株式数の前提が異なるため、たとえばヤフーファイナンスUSのデータを参考にしている人と、SeekingAlphaのデータを参考にしている人との間には、同じ銘柄のPSR値でも差が出ます。

このあたりをガチで指摘した記事をnoteにアップしています。

https://note.com/soubaroku/n/ne7347a968406

私はSeekingAlphaのデータのまとめ方をもとに、各社の決算資料を直接見て発行済み株式数をリストしています。

おさえておくべき前提:3種類のPSR

PSRの計算は、どの売上高を使うかによって大まかに2通りあるようです(前出の発行済み株式数の前提がクリアされている、として)。前年度の売上高をもとにしたものと、最新Qを1年分掛け算したものです。SNSやブログで見かける、PSRを使っているすべての人が、このうちのどちらかを使っていることがわかりました。さらに私はもうひとつPSRの計算法があるのに気づいたので、今回は3種類をまとめます。

YoY型

前年度ベースのPSR。年単位の決算データをもとに設定されます。グロース株を取り扱うときは、成長スピードに過去データがついていけないことがあるため、基本的にこの数値はグロース投資家たちは使いません。

Q×4型

対してこのPSRは、たとえば3Qの売上高だったら、3Q×4回分=仮の1年分の売上高、と想定するものです。企業成長力が強いので年ベースでは予想数字が合わない問題を最新決算の4倍という設定で解決します。

4Q型

さらに、私はもうひとつPSRのタイプがあると思っていて、それは直近の決算4回分を1年分とするPSRです。

YoY型は、3Q、4Q決算と回を重ねるごとに実態数字がかい離していく問題がある。最新の決算を4倍にしたQ×4型は、突出した決算を出した回ではもしかしたら過剰に割安評価になりかねない危険性をはらむ。4Q型はYoY型のかい離の問題を克服し、かつ、4Q型の突出決算に対応した数字に落ち着かせる効果があります。

割高順に、YoY型>4Q型>Q×4型

これらのPSR倍率は、最新決算発表日の終値をもとに計算をします。順調に成長している企業なら、YoY型がいちばん割高になり、Q×4型がいちばん割安になります。倍率の数字が違って出るので、投資家ごとに見解が分かれ、分析の意味がない、という批判もありますが、わたしは株価の上昇はPSR差がうまっていくのではないか、と考え、以下の仮説を立てました。

一番割安のPSR倍率から、次に割高になった倍率にその株価が成長するのではないか?

たとえば、基準日に100ドルだった1つの銘柄のPSR数字が、割高から順に50倍、30倍、20倍と出たとすると、一番割安な20倍から30倍、あるいは50倍に成長したら、次の決算発表までの3か月で将来株価は、

100ドル(20倍)→150ドル(30倍)
100ドル(20倍)→250ドル(50倍)

というようになっていくのではないか?と考えました。

で、結論からすると、分析銘柄のうちかなりの確率で結果が出ました。次の四半期までに、それぞれの銘柄の株価成長のメドが立てられます。

メカニズム

3つの指数でそれぞれでまずPSR倍率を出しますが、直近決算発表日の終値を基準にします。それを表にまとめたのが以下になります。参考に、クラウドストライク($CRWD)2020年1QのPSR値を出してみました。

決算発表日が2020年6月3日(=SECファイリング日)で、その日の終値が98.1ドルでしたので、この株価をもとに、各PSR値を算出すると、YoY型が178.43倍、Q×4型が29.75倍、4Q型が37.61倍、となりました。これらをもとに、それぞれのPSR値が、ほかのPSR倍率になったら株価はいくらになるのか、を計算した結果が青で塗られたセルのところに出ています。それぞれのメカニズムは以下になります。

この株価メドの計算値は、次の決算まで、としています。次の決算までに、計算結果の値をクリアしたら、想定達成とします。PSR値をもとに算出した株価は6通り出てきますが、YoY型は3つのPSR値の中で最も割高なので、計算はおのずと割安値への掛け算になるため、結果は基準株価よりも常に下になります。基準株価より下の数値は不採用、にしているので、それを避けるために計算結果を1.5倍に高めて出すことにしました。この係数のかけかたは今後の研究材料ですが、ひとまずこれで出しています。

念のため、その期間中につけた最高株価も記録します。

これらのまとめ方で、対象銘柄を計算してまとめると、以下のような傾向が出ています。つまり、目標達成の順序に法則性がある、ということです。

つまり、算出株価は、Q×4型が最も割安のケースだと、④が一番割安値(=基準株価に最も近い株価)が出て、次に⑥、③とだんだんと高くなっていきます。③についてはほぼ非現実的な株価が算出されますが、成長企業はときにこの数字すらもブレイクするので、計算の価値があります。

実際の銘柄でシュミレーションをしてみる

では、実際の銘柄を使って、この計算結果がどうなったかを見てみます。

クラウドストライク($CRWD)2020年1Qから3Q

先の例で、1Qのものを使用しました。

基準株価は98.1ドルで、次の決算までにつけた最高値が153.1ドルと、150%ちょっとの上昇を果たしました。Q×4型の対4Q値の124.03ドルを突破しました。2Qを見てみましょう。

10月14日に153.9ドルを達成したものの、各数値に対しては下の結果。157.22ドルにわずかに及ばず、でしたが、次の決算内容がよければ、大幅な上昇を感じさせる結果でした。

Q3での好決算を受けて株価は上昇し、前回の想定通り第1想定をクリアしています(2020年12月22日現在)。2月までの想定株価は、次は255.01ドル、その先に311.34ドルがありますが、どうなるか。

ドキュサイン($DOCU)2020年1Q

ここではかなり強い上昇を示した例をとりあげます。

1Qの成果がよく、株価も上昇。9月2日には290.23ドルをつけましたが、想定株価をはるかに上回る数字になっています。第3想定は、基準株価の倍以上にもかかわらず、株価はさらにその上。本当に上昇するとこうなる、という例でした。

フルジェント ジェネティクス($FLGT)2020年1Qと2Q

2020年1Qでは、4Q型がQ×4型よりも割安な逆転現象が起こっていました。8月4日に33.01ドルの高値を付けたことで、2つの想定をクリアしています。

2Qは、最高値52.47ドルが、第1想定にあとちょっと届かずの結果に終わりました。

ピンタレスト($PINS)2020年1Qと2Q

ピンタレストの1Qは、4Q型がQ×4型を下回る割安逆転現象が起きていました。株価は一方で値上がりし、2つの想定値をクリアしました。

2Qも引き続き割安感のある展開になりましたが、株価は堅調で2つの想定値を軽くクリア、第3想定まで迫る勢いを見せました。

結局、何倍まで上がったのか?

PSR分析で出る倍率は、何倍なら割高なのか?という議論はいつも尽きません。それぞれのタームでそれぞれのPSRが何倍まで上昇したのかは、その期間中につけた最高値から算出できます。それぞれの表には最大PSR値をつけました。

たとえば、ピンタレストの場合、

YoY型は27.4倍から42.8倍に、Q×4型は18.89倍から29.68倍に、4Q型は16.82倍から26.43倍に上昇したことがわかります。同系セクターの銘柄分析を複数続けてみると、その傾向が出てきますので、それをもとに3つのPSR倍率を試算してみる、という研究もありそうです。

おっかけPSRの株価メドに至る確率は?

2020年12月28日現在、総分析数は19銘柄、49ターム分ありますが、第一メド到達確率は73%となっています(現在進行中19ターム分含む)。4Q型が割安になる逆転現象銘柄は、7銘柄で100%となっています(*逆転現象で算出される第一メドと基準株価の開きはあまり大きくないので、達成は容易な傾向があります)。

noteに最新の分析データを有料記事で掲載しています。個別銘柄で研究してみたい方はぜひともご利用ください。

https://note.com/soubaroku/n/n0575a32592bc

無料部分と有料記事があり、2020年12月30日現在の研究銘柄数は19です。